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バードコール(音声誘引装置)によるウミガラス(オロロン鳥)の繁殖支援

バードコール(音声誘引装置)によるウミガラス(オロロン鳥)の繁殖支援


ウミガラス(学名 Uria aalge、英名 Common Murre)は北太平洋や北大西洋の亜寒帯海域に広く分布する全長40cmあまりの海鳥です。カラスと名前が付いていても、カラスの仲間ではありません。

 5〜7亜種が知られていて、日本で子育てする種類は日本からロシア、ブリティッシュコロンビアにかけて分布しています。おもな食べ物はイカナゴ、ギンポやカジカなどの魚類、イカなどの軟体動物です。崖のせまい岩だなにたくさんの数が集まって子育てし、サハリンのチュレニー島などでは台地状になったたいらな岩場でも繁殖しています。洋ナシ型の卵をひとつだけ産み、30〜33日卵をだきます。ひなはうまれてから21〜30日で巣だちます。

「おろろろーん」となくことから、北海道天売島ではオロロン鳥としたしまれています。1938年、『天売島の海鳥群集』が国の天然記念物の指定をうけたとき、およそ四万羽がいたとされています。かつては北海道東部のユルリ島、モユルリ島、南部の松前小島でも子育てしていましたが、現在はこの天売島にわずか十数羽がのこされるだけとなりました。
(文:北海道海鳥センター)


2006年度版3号システムの全体図。ソーラーパネル4枚は、装置全体としてはかなりオーバースペックの感もありますが、夏場の曇りや海霧の発生を想定して、短い晴れ間の時間で一気に大容量のディープサイクルバッテリーに蓄電するという設計コンセプトです。この地域の日照時間のみを計算すれば2枚でギリギリ大丈夫な気もしますが、このような島嶼部では例外です。1号、2号システムで使用していた360度無指向性スピーカーシステムも取り込んで2種類の音声を発声させます。装置の稼動は夏場の営巣時期のみで、夜間は音声装置を停止しますし、荒天時の発生も不要ということで、停電保証日数はあまり長く見込んでいません。
図中の40W×4という表記は設計時のスペックで、最大出力70W×4の能力があります。ただ、電力消費も考慮して、実際には40W×4の出力設定(スピーカーのインピーダンス構成)で使用しています。デジタルアンプは数ミリアンペア〜数アンペアまでの出力に応じた電力をそのままスピーカー出力として動的に転換しますので、A級アナログアンプの数分の一程度の電力で動作可能な特殊なアンプです。また音声装置自体も、省電力構成の特殊な再生装置です。



40W(70W)×4の音声メモリ内蔵高効率FETデジタルアンプ2006年版。CFカードにはウミガラスの営巣音声がWAV形式で保存されていて、自動的にウミガラスの鳴き声を発声するようになっています。デジタルアンプは40W(70W)×4を12Vの低電圧で出力可能です。この出力をホーンスピーカーから発すると、最大出力で街宣車並みの音圧を発生する事ができます。デジタルアンプはほとんど発熱する事の無い特殊なアンプで、非常に効率良く音声信号を増幅します。ケースは防水タイプです。昼夜の寒暖の激しい場所で、湿度も100%に達する場合があるため、外殻の耐衝撃防水カプセルの内部もシーリングを透して水蒸気の出入りによって結露を生じます。そのため、内殻自身も防水である必要があります。

出力 : 40W(70W)×4CH(BTL) 4Ω
定格電源電圧 : 最大20V、標準DC12V〜14.4V
周波数特性 : 20Hz〜20KHz ⇒ ±1db
音質特性 : 10% THD+N @ 50W4Ω、0.04% THD+N @ 27W4Ω
動作温度 : −40℃〜+85℃(IC単体)
保存温度 : −55℃〜+150℃(IC単体)
基板サイズ : 150*110mm

アンプは電界効果トランジスタ(FET)を使用したデジタルアンプは、非常に高い高調波変調した音声信号をBTLという方式で直接FETのH型ブリッジで正負に振って、低電圧でも2倍以上の振幅比で大きなスピーカー出力を得ています。出力は可聴範囲外の高調波をフィルタリングしています。

音声再生モジュールは音質劣化を考慮してMP3圧縮ではなくWAV形式のままデータデコードしています。そのため、256MbyteCFカードで44分の44.1KHz再生が可能です。実際に、どの程度の音質劣化が、誘引に影響するかと言うデータは無いため、可能な限りの音質向上措置です。実際のところ、アンプの歪率やスピーカーの周波数特性から考えて、MP3で十分な気もします。本機は128MbyteCFカードを搭載しました。音声データは、アメリカ合衆国のFWS、魚類野生生物局(the U.S. Fish and Wildlife Service)からデビルススライドロックプロジェクトの際に使用されたアラスカ系ウミガラスの音声を好意で提供受けました。サハリン系とは多少違うようだという意見もあります。影響は現在のところ不明ですが、実際、効果には問題ないようです。

ラボで動作テスト中の40W(70W)×4の音声メモリ内蔵高効率デジタルアンプ2006年版。外殻の10mm(一部15mm)樹脂シュラウドが内部の装置を軽度な落石から保護します。本来は配水管部品ですが、加工が容易で非常に堅牢なため、フィールド設置装置でもしばしば利用しています。多少重いのが難点です。ほとんど発熱の無いデジタルアンプのため、40W(70W)×4という大出力にもかかわらず、密閉容器に安心して収納できます。屋内での連続出力テストは、ダミーロードを使わず、スピーカーを毛布でくるみ、複数の段ボール箱に詰め込んで実施しました。今年のシュラウドはケーブルを側面から出し、上部蓋からの保守性を向上させました。
右は20Wシングルデジタルアンプからの営巣音声を発声させる360度無指向性スピーカー。防塩型(船舶用)スピーカーを使用しています。船のコンパスに影響を及ぼすことの無い超低磁束スピーカーを使用している特殊なスピーカーのため、渡り鳥であるオロロン鳥への影響も最小限で済みます。そのため、巣の直近にも設置可能です。落石が頻繁にある場所なので、非常に頑丈な外殻を持っています。しかし、残念ながら1号機(2004年)では断崖上部からの氷塊落下によるケーブル切断事故が発生しました。翌年からはPF管による保護を行っています。

外殻材質: 塩ビ、ABS樹脂 10mm厚、一部15mm厚
使用スピーカー: マリンスピーカー 4インチモデル
メーカー: poly-planar
出力: 最大40W インピーダンス 4オーム
サイズ 外径:133mm  カットサイズ:105mm  奥行き:51mm 


タコ足状態の電源供給ユニット。4枚の太陽電池パネルの14〜19Vの出力を安定した12Vにしてディープサイクルバッテリーに充電する能力を持っています。また、太陽電池パネル自体を日照センサー代わりにして、各音声装置の電源のON/OFFも行っています。これにより夜間の動作の停止を実施しています。日の出前日没後の一定時間の動作の場合は、釧路湿原で使用したような日の出日没電子タイマーを用いることで可能です。 内部の装置も完全防水仕様にして有りますので、このシュラウドにも排水ドレインを設けて、結露水を排水します。経験上、完全水密構造は温度変化には弱いようで、すぐに結露が発生するようです。
定格15Wのホーンスピーカーですが8Ωなので、デジタルアンプ側の出力は半分になる。実際には2個並列か2個直列の選択が可能。実際に担当官が現場で聴きながらセッティングしたが、2個直列で十分な音圧を確保できたとのことでした。出力を抑えることが出来れば音質と消費電力で非常に有利になります。音圧は1個で鳴らした時よりも2個で半分の出力で鳴らしたほうが高いようです。

材質: ABS樹脂、ステンレス
形状: 指向性ホーンスピーカー 280mm×180mm
メーカー: 海外製
出力: 定格15W最大40W インピーダンス 8オーム


無指向性スピーカーは設置場所の関係から岩盤上に水平にアンカーを打っているめ、横に倒れた状態で稼動しています。 幸いにも岩盤全体が反響しているため、音の指向性は影響を受けず心配は無用だった模様です。現在はFP管で保護していますが、1号システムの際には、冬期間の落氷でキャプタイヤケーブルが切断されてしまいました。夏場の営巣時期のみの運用なので、実害はありませんでしたが、修理の必要がありました。 1号システムでは完全密閉型にしましたが、結露で水が内部に溜まってしまったため、3号システム構築時の補修の際にドレインホールを下部にいくつか設けました。スピーカー自体が船舶用防塩耐水スピーカーなので、浸水しても然程大きな影響はありません。

事業主体が設置した3号システム(2006年)弊社のホーン(指向性)スピーカーの状況。もう少し格好の良い架台を用意しましたが、こちらのほうが現場作業としては合理的だった模様。このホーンスピーカーの音圧は非常に強いため、沖合い数キロ先でも鳴き声が届いたそうです。

船舶にも使用されている防水防塩タイプですが、ケーブルの取り出し口の構造などに多少の不安は残ります。念には念を入れ、ゴムブッシュ部にシーラントをたっぷり塗り込めばよかったかもしれないと思っています。然程高価なものでもないので、消耗品と考えたほうが良いかもしれません。

ホーンスピーカーは合計8個設置しています。出来るだけ遠くまで大音響で鳴らしたいという要望でしたが、巨大なスピーカよりも小型のホーンをクラスターにしたほうが、効率が良いという音響専門家の意見も有りましたので、中音量のスピーカーを8個にしました。太陽電池電源と言うことで、アンプ自体も数百Wを出せるだけの電源供給が見込めない環境ですので、結果的にベストマッチングだったと思っております。また、その大きさゆえ、太陽電池架台に一緒に設置できたことで、合理的な形になりました。実際に並列と直列で音量調整も可能なため、現場では音量を確認しながら、2個ずつの直列接続でアンプにつないでいます。

太陽電池パネルの上辺には鳥が止まるのを阻止する串状の突起を高密度で設けています。単管にはペンキでウェザリングを施しています。この素材はスタッフのアイデアのようです。実際、太陽電池パネルにはしばしば鳥がとまりますが、飛翔の際に高い確率で糞をするため、セル同士が直列に繋がっている太陽電池の場合、一部であっても汚損は深刻な問題です。交通設備では細いワイヤーを張ったり、針金で数本ロッドを設ける例は、道路標識の太陽電池などで良く見かけますが、あまり効果は感じません。しかしこれだけの密度であれば、止りようが無いでしょう。
2004年度版1号システムではアンプ部の焼損事故がありました。太陽電池パネルの発電電圧が予想以上に高くなった事で、密閉容器に入っていた降圧レギュレータがその電圧差に耐えうる放熱措置不足により、過負荷に耐えられなかったものと推測されます。電源入力部の降圧シャントレギュレータのみの焼損だったため、音声装置やアンプは無事のため、ただちに2号機として該当部分の改修を実施しました。2号機以降は極端な降圧を行わないシステムに変更しました。それ以来順調に稼動しています。

しかし、昼夜センサの感度が良すぎて、微小な配線の電位差で夜間も音声装置が動作するトラブルがありましたが、3号機ではソーラーパネル自体をセンサ代わりに使用して、確実に夜間はシャットダウンするように改良しました。




  関連リンク:北海道海鳥センター http://www3.town.haboro.hokkaido.jp/seabird/

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