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ロボット酔い・眼球と移動体カメラについての考察
image 人間が瞬時に対象物を視界に捉える場合、最初に広範囲の被写界から抽象的な画像認識を行う。次に、眼球を動かし、その対象物を被写界中心に捕捉し、次にフォーカシングする。このタイミングを同じくして、頭部の移動が始まる。しかし、頭部のチルトパン運動に対し、眼球は被写体を中心に捕捉し続ける。これが、高速追尾の基本となる。つまり、重いカメラとハウジング全体を移動させる現在のチルトパンカメラではなく、ガンダムのザクのメインカメラのように、被写体を高速追尾し、頭部はその後、緩慢に追従するという運動が理想的と言えるのだ。 このようなチルトパン運動はどのような利点があるのか。それは、カメラを見ながら操縦する移動体に於て、操縦者の負荷軽減にあるといえる。つまり、高速で追尾する眼球に相当するカメラヘッドは、移動の際、そのフォーカスを比較的曖昧にして、操縦者の船酔いに似た症状を緩和してくれるのだ。バレリーナが回転する時、頭部は先に素早く回転と停止を行い、体の回転とは隔離させていることも同様だ。

image 実際に、戦車や歩行ロボットのラジコン模型に、無線式CCDカメラを搭載して操縦してみた経験のある方も多いと思うが、数分で車酔いのような症状に陥ったのではなかろうか?また、DOOMなどの3Dゲームで上下動する歩行視界を長時間続ける事で、船酔いに似た症状に陥った経験の有る方も多いだろう。バーチャル空間において、三半規管の感じる実際の体の挙動と、視覚から得られる仮想の挙動の差は、時として非常に激しい空間感覚失調を引き起こす。現実世界においても、視覚ゼロの雲の中あるいは夜間に、体を座席に完全に固定された戦闘機パイロットがバーディゴと呼ばれる、空間識失調を起すことは知られている。視覚による空間認識と体感による空間認識の累積誤差によって生じる脳の混乱だ。身近なところでは、映画の真っ暗な背景のスタッフスクロールを見た後、最後に出て来る配給会社の静止したテロップが上下に動いているように感じて、眼球が上下に揺れる経験をした方も多いだろう。

image 遠隔視覚において、操縦者に対しては、三半規管のレスポンス以上の素早い視覚移動が必要なのだ。遠隔操縦において、ロボット酔いを防止する為にも非常に重要な事柄だ。実際の対策としては、二次元平面移動ロボットにあっては、移動時の上下動を極力押える。またカメラにはスタビライザを装備して、視線のねじれやドリフトを防止する。視線移動は可能な限り素早くする。場合によってはチルトパンヘッドではなく、ポリゴンミラーによる視線移動や、カメラマルチプレクサのような電気的切換で視線移動を行うことも検討するのが良いだろう。その場合、疑似的な視界移動加速度を操縦者に与えるのも対策として研究する余地は有ろう。

ヘッドマウントディスプレイに加速度センサを装備して、PTZカメラを遠隔操作で動かすというのが、良く大学の研究室などで流行っている。不整地走行している遠隔操作ロボットのPTZカメラと連動させたら、どのような事がおこるだろうか?人間は注視する視点を見続けようとするが、仮想画面の一点の動きは遠隔操縦者の加速度とは一致しない。つまり、機体が跳ね上がって被写体が画面下方に移動した瞬間、無意識のうちに頭を下げた遠隔操縦者の加速度センサは視線の下降を検知してPTZカメラのチルトモータを回してカメラを下に向ける。これはごく自然な視線移動だ。体感的に機体挙動を伝えるか、視覚的に操縦者に視線移動を任せるかは、今後の検証に任せたい。


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